2022年12月に発表された令和5年度税制改正の大綱等において、2024年以降のNISA制度の抜本的拡充・恒久化の方針が示されました。
増税祭りに物価上昇(インフレーション)で円の価値も目減りするとなると預金だけでは不安で、何かちょっとだけでもやってみたいと思ったり、これを機に資産形成を頑張ってみようと考えている方もいらっしゃるかもしれません。
5年近く運用してみて、あらためて私が大切だと思った資産形成の考え方の「基礎知識」について整理してみました。
複利効果 - 複利は人類最大の発明である -
アルバート・アインシュタイン博士が残した有名な言葉があります。
「複利は人類による最大の発明だ。知っている人は複利で稼ぎ、知らない人は利息を払う」
“Compound interest is man’s greatest invention. He who understands it, earns it. He who doesn’t pays it.”
- 単利…元本にだけ利子がつきます。
- 複利…元本と前についた利子をあわせた金額に対して利子がつきます。
※ 「複利」を活用して資産形成していきましょう!
資産運用シミュレーションを使って複利をイメージ
シミュレーション結果はあくまで予想値であり、結果が確定しているわけではないことに注意しながら、将来を想像してみましょう!
分散投資 - 卵は一つのカゴに盛るな -
リスク分散をあらわす相場格言に、次のものがあります。
「卵は一つのカゴに盛るな」
“Don’t put all your eggs in one basket.“
特定のひとつの商品を一括で多くの資金を投入してしまうと、その値が上がった時は嬉しさを感じますが、反対に下がった場合は自分の資産も大きく減ってしまいます。
回避策として、一般的に主に次の3つの分散がリスク軽減がしやすくなるとされています。
資産・銘柄の分散
株式投資、投資信託、ETF(上場投資信託)、金、債券、外貨預金、FX、暗号資産、不動産投資、デリバティブ(先物取引、オプション取引)、MMR・MRF など
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インカムゲイン…資産の保有中に保有口数に応じて分配されて得られる利益
- キャピタルゲイン…資産の売却により購入時の基準価格を上回ると得られる利益
※ これからスタートするなら、「インデックスファンド(市場の値動きを示す指数と連動して同じ値動きを目指す投資信託(専門家が運用))」がはじめやすいでしょう。
国・地域の分散
日本、先進国、新興国 など
※ 「異なる地域のもの(複数の国・地域)」を組み合わせるとよいでしょう。
時間の分散
市場は常に値動きしています。複数回数に分けて売買することで買値・売値を平均化すると、急騰や暴落(高値掴みや安値売り)の影響を和らげることができます。
※ 金融商品は値動きがあるので、どのタイミングで売買すればよいのかを判断するのはとても難しいものです。「一括ではなく、複数回に分ける」とよいでしょう。
長期的な資産形成に役立つ手法
ドル・コスト平均法
定期的に一定の金額の買い付けを行うことによって、価格が安いときは多く、価格が高いときは少なく購入するため、結果として平均単価を下げる効果が期待される手法です。
例:毎月1日に1万円を購入することを20年継続する
※ 中長期に運用する時に効力が発揮されます。
コア・サテライト戦略
自分のポートフォリオ(分散した金融商品の組み合わせ)を組む時に役立つ考え方です。
- コア投資(守りの投資)…中長期で安定的に運用。老後資金など。
- サテライト投資(攻めの投資)…リターンを高めて積極的に運用。すぐに使うための資金など。
バイ・アンド・ホールド(Buy and Hold)
買い持ちしたまま長期に保有する投資手法です。保有中に暴騰や暴落を繰り返したとしても、長い目でみるとよいリターンが得られることを期待するやり方です。
※ 日々、資産は上昇と下落を繰り返しますが、長期運用の場合は売却せずに持ち続けるメンタルを養いましょう。
参考:出口戦略(4%ルール)
例えば老後資金として長期運用した後、目標の年齢または金額に達した時にどうやって資産を取り崩していくか、というのは、その時点での状況が今時点で読めないので結構難しい問題です。
最近、「経済的自立」と「早期リタイア」を意味するFIRE(Financial Independence, Retire Early)が話題ですが、売却の目安で「4%ルール」という考え方があるのでご参考まで。
ざっくりですが、「年間支出の25倍」の資産があれば、引き続き運用しながら「毎年4%ずつ」取り崩せば資産を減らさずに生活していける、というものです。
余剰金など困らない金額からはじめる - 投資と投機 –
どんなに調べても全くわからない仕組みのものには、積極的には手を出さない
明確な定義はないそうですが、「投資と投機」とは、ざっくりとはこんなイメージでしょうか。
- 投資…将来的な利益を求めて資金投入すること
- 投機…短期的な利益を求めて頻繁な取引やレバレッジをかけて資金投入すること(高リスク)
私の場合ですが、暗号資産に興味があるものの、調べたり友人に聞いてもよくわからなかったので、新規口座開設キャンペーンで2,000円プレゼントがあり、それを使って試してみました。残念ながら2022年後半に半減しましたが、いつか上がるかもしれないのでそのまま保有しています。
自分に合ったやり方で運用し、常に最新情報を入手し続ける
税金と非課税制度を知る
得た利益に対して、20.315%(所得税および復興特別所得税15.315%(※)、地方税5%) の税金がかかります(2023/1/1現在)
(※)2013年1月1日から2037年12月31日まで、復興特別所得税として基準所得税額に2.1%が上乗せされています。
証券会社で口座を開設するときには、口座種類を選択する必要があります。
- 特定口座(源泉徴収あり)…1年間の売買損益について証券会社が年間取引報告書を作成し、代理納付するため、確定申告は不要。
- 特定口座(源泉徴収なし)…1年間の売買損益については証券会社が年間取引報告書を作成するが、自分で確定申告が必要。
- 一般口座…自分で1年間の売買損益を計算して明細書を作成し、確定申告が必要。
また、上記以外にも国が準備した運用の際に非課税になる制度(口座)もあるので、概要を理解して活用しましょう。
- iDeCo(個人型確定拠出年金)
- 一般NISA、つみたてNISA[〜2023年まで]
- 新しいNISA[2024年〜]
※ iDeCo…確定拠出年金法に基づいて実施されている私的年金の制度。掛金、運用益、給付を受け取るときに、税制上の優遇措置が講じられています。ただし、受け取り時の年齢設定(原則60歳以降)やその他にも一定の条件があり注意が必要です。時々制度改定があるので、出口戦略を考える時は特に最新情報を入手しましょう。
※ NISA…少額投資非課税制度。設定された投資枠から得られた利益に対して税金が非課税になる制度です。2024年から新たにスタートするNISAは、拡充・恒久化でかなり使いやすくなっています。
経済や世界の状況を知る
資産運用をはじめると、自然と経済や世界のニュースに敏感になってくると思います。
私も最初はちんぷんかんぷんでしたが、少しずつ調べたりしていくうちに狭かった自分の世界が開けたような気がして、資産形成ってとても面白いなと感じています。
小ネタ:靴磨きの少年の話
政治家でもあり投資家だった、ジョン・P・ケネディ氏(アメリカ大統領のジョン・F・ケネディの父)が少年に靴磨きをしてもらっていた時に、少年から儲かる株の話を聞き、その後保有していた株をすべて売却し「暗黒の木曜日」を回避した、というお話です。
これは、投資に興味のない人でも知っているようなトレンドの段階では、株式市場の株価はすでに天井圏で高値掴みしてしまい、近く暴落により利益がマイナスになる可能性があることを示す話として有名です。
といっても、投資をはじめたばかりの頃は、何がどういう状態かもわからないと思います(私も最初は全くわかりませんでした)。この教訓からも最初は無理のない範囲で少しずつスタートしてみることが大事だと思います!